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STORY
コロナウイルスの影響でSTAY HOMEが呼びかけられた2020年5月。
室内で富士山を探し出せるポストカードを制作し、
オンラインショップやSNSを通じてご希望の方に無料送付するキャンペーンをしました。
多くの方々から、発送依頼とともに温かいメッセージが届きました。
ささやかな遊びの提供しかできない非力な自分は、逆にエネルギーをもらう結果となったのでした。
その中で、お二人のお客様のメッセージに僕の衝動を強く掻き立てるストーリーがありました。
お二人とも、過去に大切なご家族をなくされていました。
「富士山を仰ぎ見る時、亡くした誰かを想う人だっているのだ」ということを、
僕にはっきりと意識させてくれた、心に染み入るエピソードでした。
僕は富士山と祈りをコンセプトにした何かを作りたいと思うようになりました。
ある夜。何も思いつかないまま寝室に入りました。
スヤスヤと眠る2人の息子たちの頬に触れた時に、「あたたかい」という当たり前のことを思いました。
同時に、「亡くなった人を想う時、その故人に触れることはできない」という当たり前の事にも気がつきました。
触れることができなくとも、残された家族は日々を生きていくわけです。
僕は、物体として触れられないモノで日常に富士山を表現したいと考えました。
翌朝。朝日がぼんやりと差し込む窓辺で、あれこれと試していました。
その時、鏡と光と影で富士山を作り出すというアイデアが生まれました。
この鏡が作り出す富士山は、意識しなければ目の前に姿を現すことはないでしょう。
それは大切な誰かが人の記憶の中に現れることと、同じかもしれません。
僕がこの世を去った後の日常で、家族がこの卓上ミラーに富士山を見つけては、僕を思い出すのだろうと
妄想すると、この作品は僕自身の位牌や墓石のようなモノなのかもしれないとさえ思います。
そんなふうに。
この鏡が作るおぼろげな富士山が、記憶の中で人と人を結ぶモニュメントになってくれることを願っています。
もちろん、卓上ミラーとしてお使いください。
Desktop Mirror Fuji
goodbymarket 代表・デザイナー 池ヶ谷知宏